プレスリリース

独が背負う負担の大きさ

ウクライナでの一週間の滞在を終え、小児がんの国際学会に出席するため、ドイツに向かった。
機内で久しぶりに新聞を手にした。「子供たちを救え」と題した記事に目。がいくユーゴスラビア紛争の話であった。
ユニセフ(国際児童基金)の報告では、今冬、百二十万人の子供たちが飢えと寒さで死に直面するだろう-と伝えている。
この数字は日本で一年間に生まれる子供の数に相当する。一九八四年に冬季オリンピックが開かれたサラエボではクリスマスまでに5,6mの積雪で、全ての道路と空港は閉ざされると予測されている。
驚いたことに、ドイツでの今回の学会には世界中の発展途上国から百五十人を超す医師が招待されていた。
地球上の全ての子供たちが近年の小児がん研究の進歩の恩恵を受ける権利があるとの考えに立ったものである。

アフリカや南米の医師とも話す機会があった。ペルーの医師に「薬はありますか」とたずねると、「薬はあるが、高くて医療費を払えない親が多い」との返事だった。
ウクライナでは、医療費は無料だが、薬がなかった。結局、状況は同じである。

実は、ウクライナのオデッサ小児病院の教授から、学会で会うヨーロッパの医師たちに援助の依頼をしてほしいと頼まれていた。
今回の学会の主催者であるハノーバー大学のリーム教授に、それを伝えたところ、急に険しい表情になった。
「われわれは旧東ドイツをはじめ、ユーゴスラビアにも多額の援助をしている。もちろん、旧ソビエトのめんどうも見ている。大変なんだ。日本は金持ちじゃないか。君たちももっと頑張ってほしい」
厳しい返事だった。
はからずもドイツが背負っている負担の大きさを知らされた。
(平成4年11月13日 産経新聞掲載記事)