プレスリリース

ウウクライナの若い医師に小児科学の夢運ぶ

明日(3日)からウクライナ(CIS)のオデッサへに行く。
私の専門は小児血液腫瘍(しゅよう)学で、子供の白血病や固形癌(がん)の診療と研究をしている。
今年初め、私と同じ分野を担当するオデッサ小児病院の専門医二人が来日し、私たちの病院で研修した。
チェルノブイリ原発事故以来、白血病が増えている-という援助要請を受けたものだった。

現在、日本や欧米諸国での小児白血病、特にその多くを占める急性リンパ性白血病患者の長期生存率は70~80%。多くは治癒すると考えられている。
しかし、医療品が絶対的に不足している向こうでは、十人に一人しか助けられないという。
オデッサは黒海に面した貿易港だが、病気の子が外国に行く船員に薬を頼むこともあるそうだ。
さらに、われわれは簡単に世界中の最新医療情報を得られるが、彼らはモスクワまで出向かなければならない。
治療成績を良くするには医療品や医療器具に加え、充実した看護や検査の態勢が不可欠だが、そのいづれもが不十分だ。
日本で新しい治療方法を学んだ彼らにとって、オデッサに戻ってからの診療はかえって辛いものになっているかもしれない・・・。
が、研修中、彼らの一人は言った。
「小児科医になったことを後悔してはいない」
互いの間に横たわるすべてのギャップを埋める言葉だった。
小児科は、我が国の医学生に最も不人気な科の一つとなってしまった。
小児人口の減少や手間と苦労の割に経済的に恵まれないことが大きな理由である。けれど、私は小児科学は夢のある学問であると信じている。
オデッサでは学生の講義も担当する。若い人たちに夢を持ってもらうこと。それがスタートと考えている。
(平成4年10月2日 産経新聞掲載記事)