プレスリリース

小児科医が支える母親の健康

小児科医の役割は子どもの健康を守ることです。さらに現在の小児科医は子育て支援も重要な仕事と考えています。
私が開業して3年半が経ちましたが、この間子供たちを連れてくる母親を見ていて重要なことに気付きました。それは子育てや家事に追われている母親は体調が悪くても自分のために医療機関にかかることはほとんどないということです。
子育てに奮闘中の母親は主に20歳代から30歳代の女性で、この年代の女性が実際に重大な病気にかかることは稀です。子どもの風邪をもらって具合が悪くなることがほとんどですが、それでも家事や育児に忙しい母親にとってはつらいものです。
今回は子育て中の女性に比較的多い健康問題について書いてみたいと思います。

(1)鉄欠乏性貧血
鉄分が不足するために起こる貧血ですが、若い女性には潜在的な患者さんが少なくありません。
女性は生理による出血があるため男性より貧血になりやすく、また妊娠により子どもに鉄分を取られるため貧血になりやすいのです。
先日も肺炎にかかった子どもを連れてきた母親の顔色がとても悪いので、説明して検査をしたところ貧血が強く、ヘモグロビンは健康な人の半分くらいしかありませんでした。貧血なると疲れやすくなりますが、本人は全く気付いていませんでした。これは貧血が少しずつ進むためで、体がその状態に慣れてしまい、このお母さんのように意外に自覚症状が乏しいことも珍しくありません。この方は鉄剤を服用して速やかに貧血は改善しました。

(2)甲状腺の病気
甲状腺の病気も若い女性に多い病気で、妊娠を契機に発症することもあります。 ホルモンの分泌が過剰になる機能亢進症(バセドウ病)と逆にホルモンが少なくなる機能低下症があります。
やはり風邪の子どもを連れてきたお母さんの顔色が悪く、顔も浮腫んでいたので検査をしました。貧血を認めた上にコレステロールの値が異常に高いため、詳しく調べたところ甲状腺機能低下症であることが分かりました。この病気になると元気がなくなり、気分が落ち込み、顔や足が浮腫みます。JA高病院の内科で甲状腺ホルモンの投与を受け、全ての症状は改善しました。

(3)片頭痛
片頭痛は若い女性に多く、特に30歳代の女性の5人に1人は片頭痛を持っているといわれています。
症状は特徴的でズキンズキンと拍動性の激しい痛みを認め、数時間から長いと3日間ほど続くこともあります。動くと痛みが増強し、吐き気や嘔吐を伴うこともあり、日常生活が著しく障害されます。
頭痛は本人にしかわからない痛みであり、周囲からは神経質であるとか、怠けているようにとられることさえありますが、本人にとってはとてもつらく家事や育児どころではなくなるものです。
ほとんどの人は市販の痛み止めを服用していますが、最近トリプタンとよばれる特効薬ができて、その治療法が一変しました。この薬を服用すると1~2時間で痛みが消失します。片頭痛持ちのお母さんは是非ご相談下さい。
小児科医は子どもの健康を守るプロフェッショナルですが、同時に母親の健康状態にも配慮したあげることも重要であり、私はそのことが子育て支援にもつながるものと考えています。
お母さん自身の体調についても遠慮なくご相談下さい。

(平成17年7月 日章公民館ニュース 【平成21年7月改筆】)