プレスリリース

保護者の病気・生活アーカイブ

我が禁煙記
今回はタバコをすっているお父さんやおじいちゃん、もちろんお母さんにもご本人の健康のためだけでなく、お子供さんやお孫さんのための禁煙のお話しです。
かくゆう私も恥ずかしながら長い間喫煙者でしたが、ある日を堺にぴったりと止めました。

以前も書きましたように私はがんの子供の診療に長く関わってきました。今や小児がんにかかった人の70%は治るようになりました。

私は成人した元小児がん患者が抱える様々な問題を支援するため月に1度上京して、順天堂大学で7年前から始めた長期フォローアップ外来を続けています。
その外来に3年前のある日、20歳代の元白血病患者の2人の青年が受診しました。2人ともタバコの匂いがするため聞くと、毎日20本以上すっているとのことでした。
せっかく苦労してがんを克服した人たちがヘビスモーカーになっていることを知って私は愕然としました。
何とかこの人たちに禁煙してもらわなければと思ったその日から、私自身全くたばこをすうことができなくなりました。
タバコの害
タバコの害については耳にたこができるほど聞かされているかと思いますが、もう一度おさらいしてみます。
タバコの煙は喫煙者が吸い込む主流煙とタバコから立ちのぼる副流煙がありますが、有害物質の多くがこの副流煙に含まれています。

自分の意志とは関係なくタバコの煙を吸い込むことを受動喫煙といいます。特に成長発達過程にある子供は家族が吸うタバコの煙により様々な健康被害を受けやすい存在です。
具体的には受動喫煙により喘息、気管支炎、中耳炎にかかりやすくなります。

赤ちゃんの突然死(乳児突然死症候群)の約60%は親の喫煙が原因とされています。また、妊婦の喫煙により胎児も大きな影響を受けます。
母親の喫煙により胎児の発育が悪くなるだけでなく、将来落ち着きのない子供や、キレやすい子供になりやすいことも明らかになってきました。
喫煙の悪影響は全臓器に及びます。全身のあらゆるがん、特に肺がん、喉頭がん、口腔がん、食道がん、胃がん、すい臓がん、膀胱がん、白血病などは喫煙が主な原因とされています。
呼吸器の病気としては慢性気管支炎や肺気腫など慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ばれる病気は喫煙が原因で起こります。
最近、特にCOPDが注目されていますが、効果的な治療法はなく最後は酸素吸入で命をつなぐことになります。

また喫煙は心筋梗塞や脳梗塞の重要な危険因子でもあります。
米国では1970年代から上昇し続けていたがんの死亡率が1994年から減少に転じていますが、これは禁煙率の低下が主に寄与していると考えられています。
その一方で日本のがん死亡率は上昇し続けています。また、心筋梗塞の死亡率もアメリカでは3分の一も減っていますが、日本では逆に1.6倍増えています。
たばこに対する大いな誤解
喫煙者はタバコがストレスを解消してくれるとよく言いますがこれは本当でしょうか?
タバコをすうと数秒でニコチンが脳に達して、快感を引き起こし、気分がよくなったように感じます。
ただそれは一時的なことで、ニコチンが切れるとまたすいたくなって、次々にタバコに手がいってしまいます。
喫煙によって解消されるストレスとは実はニコチン切れによるストレスであって、本来喫煙しなければ存在しないストレスなのです。
喫煙者の脳はタバコという詐欺師に洗脳されているともいえるのです。

軽いたばこに変える方法はどうでしょうか?これはたばこ会社の戦略にまんまと乗ってしまうことになります。
軽いタバコに変えるとニコチンが欲しいために吸う本数が増え、知らず知らずのうちに肺の奥まで吸い込むようになります。
その結果より多くの発がん物質を吸い込むことになってしまうのです。

それでは本数を減らすのはどうでしょうか?
本数が減った分、ニコチン切れがひどいので、我慢した後の1本が本当においしい一服になってしまいます。
つまり、本数を減らしている間の努力はまるで逆効果で、タバコは本当にいいものだ、自分はタバコなしではやっていけないと心に刻み付けているようなものなのです。
具体的な禁煙方法
いくら禁煙の害を説明しても、適切な禁煙の方法を指導できなければ片手落ちといえます。
最近の大きな進歩はニコチン代替法ができたことです。ニコチンパッチと呼ばれるテープを貼ると皮膚からニコチンが吸収されてタバコをすったと同じような感じになり我慢ができます。
実際に驚くほどの効果で、貼って5分程で吸いたい気持ちが無くなります。
このテープをうまく使うことにより禁煙をスタートすることは本当に容易になりまた。 ただし、ニコチンパッチにより身体的な依存は解消されても、精神的な依存から抜け出すのは容易ではありません。

そこで、先に述べたように喫煙という行為は単にニコチン中毒にはまっているという理屈を心に焼き付けることも重要な作業です。
最近は高知県下にも禁煙外来ができてきており、専門的に禁煙方法を指導してくれるとところも増えてきています。
ただし、保険診療にはなっていませんので、ニコチンパッチの代金(1枚約420円)や指導料は実費になります。

私のクリニックでもご希望の方には禁煙指導しています。
ご自分の健康のために禁煙するという方も、この際お子さんやお孫のために禁煙したいとう方も遠慮なくご相談下さい。
(平成18年8月 日章公民館ニュース)
小児科医の役割は子どもの健康を守ることです。さらに現在の小児科医は子育て支援も重要な仕事と考えています。
私が開業して3年半が経ちましたが、この間子供たちを連れてくる母親を見ていて重要なことに気付きました。それは子育てや家事に追われている母親は体調が悪くても自分のために医療機関にかかることはほとんどないということです。
子育てに奮闘中の母親は主に20歳代から30歳代の女性で、この年代の女性が実際に重大な病気にかかることは稀です。子どもの風邪をもらって具合が悪くなることがほとんどですが、それでも家事や育児に忙しい母親にとってはつらいものです。
今回は子育て中の女性に比較的多い健康問題について書いてみたいと思います。

(1)鉄欠乏性貧血
鉄分が不足するために起こる貧血ですが、若い女性には潜在的な患者さんが少なくありません。
女性は生理による出血があるため男性より貧血になりやすく、また妊娠により子どもに鉄分を取られるため貧血になりやすいのです。
先日も肺炎にかかった子どもを連れてきた母親の顔色がとても悪いので、説明して検査をしたところ貧血が強く、ヘモグロビンは健康な人の半分くらいしかありませんでした。貧血なると疲れやすくなりますが、本人は全く気付いていませんでした。これは貧血が少しずつ進むためで、体がその状態に慣れてしまい、このお母さんのように意外に自覚症状が乏しいことも珍しくありません。この方は鉄剤を服用して速やかに貧血は改善しました。

(2)甲状腺の病気
甲状腺の病気も若い女性に多い病気で、妊娠を契機に発症することもあります。 ホルモンの分泌が過剰になる機能亢進症(バセドウ病)と逆にホルモンが少なくなる機能低下症があります。
やはり風邪の子どもを連れてきたお母さんの顔色が悪く、顔も浮腫んでいたので検査をしました。貧血を認めた上にコレステロールの値が異常に高いため、詳しく調べたところ甲状腺機能低下症であることが分かりました。この病気になると元気がなくなり、気分が落ち込み、顔や足が浮腫みます。JA高病院の内科で甲状腺ホルモンの投与を受け、全ての症状は改善しました。

(3)片頭痛
片頭痛は若い女性に多く、特に30歳代の女性の5人に1人は片頭痛を持っているといわれています。
症状は特徴的でズキンズキンと拍動性の激しい痛みを認め、数時間から長いと3日間ほど続くこともあります。動くと痛みが増強し、吐き気や嘔吐を伴うこともあり、日常生活が著しく障害されます。
頭痛は本人にしかわからない痛みであり、周囲からは神経質であるとか、怠けているようにとられることさえありますが、本人にとってはとてもつらく家事や育児どころではなくなるものです。
ほとんどの人は市販の痛み止めを服用していますが、最近トリプタンとよばれる特効薬ができて、その治療法が一変しました。この薬を服用すると1~2時間で痛みが消失します。片頭痛持ちのお母さんは是非ご相談下さい。
小児科医は子どもの健康を守るプロフェッショナルですが、同時に母親の健康状態にも配慮したあげることも重要であり、私はそのことが子育て支援にもつながるものと考えています。
お母さん自身の体調についても遠慮なくご相談下さい。

(平成17年7月 日章公民館ニュース 【平成21年7月改筆】)